ミュージカル「宮古島旅情への道③」~南の島が見せてくれた、もうひとつの旅

ホテルの朝食会場で、私は二度、同じ男性を見かけました。
50代半ばほどの穏やかな表情の方で、どうやら一人旅のようでした。

そのテーブルの向かい側にもトレーが置かれていたので、
「お連れの方がいらっしゃるのかな?」と思っていたのですが、
やがて男性はウエイターを呼び、
「もう下げてくださって結構です」と静かに告げました。

ウエイターは柔らかく頷きながら、「かしこまりました」と応え、
丁寧にトレーを下げていきました。


ふと目をやると、テーブルの中央には一枚の写真立て。
そこには、聡明そうな女性がコーヒーカップを手に微笑んでいる姿――。

その女性と、私の目が合ったような気がした瞬間、
胸の奥が熱くなりました。

男性はその写真に向かって、
「今日は雲は多いけど、良く晴れてるよ……」
と、まるで隣にいるかのように優しく語りかけていました。

――もしかして、亡くなられた奥様……?

きっと、奥様がこのホテルのテラスで
美しい海を眺めながらコーヒーを飲むのが
お好きだったのでしょう☕🌴

ウエイターも、その事情を知っているかのように
自然体で対応していたのが印象的でした。

男性は、奥様を思い出の地・宮古島へ
もう一度「連れてきてあげた」のだと思います。

気づけば、私は涙をこぼしていました。
背中越しだったのでその様子を知らなかった夫は、
突然泣き出した私に驚いていました。

――そしてその瞬間、
一か月ほど前に聴いた、ある女性の講話の内容が
脳裏にふっと浮かんだのです。

「あれと同じだ……」

(続く)

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✨次回予告

「宮古島旅情~君の声が聞きたくて」誕生の裏に隠された“あの講話”とは?
その不思議なつながりを、次回<④>でお話しします。

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