健康にいいと言われている「腹式呼吸」
「お腹に息をすって」「お腹から息を吐いて
」「お腹から声を出して
」
と言うのは実は正しくありません。
呼吸が出入りしているのは「肺」です。
肺は胸腔の中にあり、腹腔ではありません。
では何故お腹が出たり引っ込んだりするかと言うと、肺の下にある「横隔膜」が上下したり広がったり縮んだりすることで上から腹圧がかかり横隔膜下の内臓に圧力をかけているからなのです。
横隔膜は胸腔と腹腔を分けている壁で、筋肉です。

体幹内には下図の様に臓器がいっぱいつまってますから、その内臓たちが中からお腹や背中の壁を押しているのです。
だから正しい腹式呼吸をするためにはお腹よりも横隔膜に意識がなければいけないのです。

横隔膜が特に大きく動くのはお腹側ではなく背中側です。
それは横隔膜の在り方から容易に想像が出来ます。

体幹の中心に大きく弧を描く形で存在する横隔膜は、前側は大きく開き後ろに向かって弧を描き、最終地点は脊椎にくっついています。

その横隔膜が自由に上下するためには脊椎、つまり背骨が自由でなければいけないのです。
脊椎を反ってしまっていたら、一つ一つの脊椎はロックされ横隔膜は上方に押し上げられたまま身動きが取れなくなり固まります。
横隔膜が固まっていたら当然豊かな呼吸は出来ません。
背中を反ってしまっている人や猫背の人は大抵呼吸が浅いです。
マッサージで背中をほぐしてもらうと呼吸が楽に感じるのは、背中の筋肉を緩める事で横隔膜が自由を得るからなのです。
でも横隔膜を意識できる人はほぼいないし、お腹を膨らませるのが手っ取り早くわかりやすいので
「お腹に息を吸って」と言うのが通例になっているのでしょうね。
でも本当に深く肺に呼吸を入れたかったら、お腹より背中なのです。
背中が柔らかいと、呼吸は実に豊かになるのです。
今後、こんなこともセミナーや企業研修などでお話しして行ければと思います。

久美江