「自分は低い声しか出ないからアルト」
「高音は出せないからミュージカルは歌えない」
「ミュージカルが歌えないから舞台の夢は諦める」
これ全部、自分で作り上げています。
パートってその音域が出るか出ないかじゃなくて、声質のことなんですよね。
低い高いじゃなくて太い声、厚みのある声、落ち着いた声・・・。
それに対して明るい声、軽い声、華やかな声、細い声など・・・。
声質でパート分けするのが正しいと私は思っています。
だから「自分はアルト」って思っていたら、あなたはアルトの声になってしまうんですよ。
高音を出す訓練をしなかったら誰だって出るわけがありません。
日本人は普段本当に狭い音域で喋っています。
度数で言うと2~3度で、それに対し欧米人は5度~6度を使っています。
おまけに日本語の母音は5個しかなくて平坦で閉鎖的です。
奥行きも深くはありません。
だから本来は歌に向いていない言語なのです。
いつもこんなに狭い音域で喋っているのに、突然超高速の粘膜振動を必要とする高音域が
直ぐに出る人なんてだれ一人いません。
なので高音を出せるようになるためには特殊な、そして何より正しいトレーニングが絶対に必要なのです。
それを高い音が出ないから、「あなたはアルトね」と先生が決めつけたら
その子はもうアルトマインドになってしまい、可能性を失くしてしまうんです!!
ほんと、そう言うのやめてほしいです。
低音、話声位、高音それぞれの声帯の筋肉や粘膜の状態、
そしてその時にどんな振動をしているのか、振動数はどうなのか?
また声帯が振動して生まれた声(喉頭原音)が、どうしたら美しく響く声となってお客様の耳に届くのか?
もし歌を教えるならそれくらいのことは勉強してほしいです。
下の図は低音と高音を出しているときの声帯の状態を表しています。
多少大雑把ではありますが、この通りです。
低音を出しているときは声帯が厚くなり大きな振動をしているのに対し、
高音域は声帯がピーンと引っ張られて表面の粘膜のみの振動となります。
その振動数は1秒間に1500回程度です。

声は姿勢とリンクしています。
何故なら呼吸に必要な器官が脊椎と密接に関わっているからです。
なので私のレッスンでは必ずその方の姿勢を見るところから始めます。
その後正しい呼吸の方向性と口の開け方を指導し、少しずつ発声をして音域を伸ばしていけば
大抵は高音域も出るようになります。
でも高音が出たからと言ってそれで終わりではありません。
雑音が入っていたり声が割れていては意味がありません。
それを美しい響きに変えていくためには空間、広がりが絶対条件です。
そこで体や頭部のマッピングが必要となってくるわけです。
指導者は必ずここまで理解していてください

もちろん声帯の構造、動き、振動などに関しても知識が必要です。

世界には、アルトだって高音がするする出ちゃう歌手、
ソプラノだって低音に落として地声で歌っているオペラ歌手は山ほどいます。
あまり勉強もしていない指導者が、子供や若い人の可能性をつぶすことだけはしないでほしいと願うばかりです。

久美江